ファミ通.comより引用

ゲーム

「The Last of Us Part II」 評価 レビュー エンターテイメントよりも辛くて厳しい体験を

2020年1番の話題作と言っても過言では無い、超大作「The Last of Us Part II」をレビューします。

この作品は発売当初から賛否両論の話題作となっており、人によって感想は様々です。
私の感想も人によっては、受け取り方が全然異なると思いますが、自分なりに受け取った感想を記載して行きます。

このゲームに対しては、「エンターテイメントでは無く、極限までリアリティを追求する事で、辛くて厳しいゲーム体験得た」と感じました

この作品は、ゲームのエンターテイメントよりも、リアリティに特化する事で、普段プレイしているゲームとは異なる経験を得る事が出来ました。ただ、その経験が必ずしも楽しいわけではなく、ゲームシステム、ストーリー含めてとても辛い経験を得る事になりました。
何故、私がそう感じたのか、ゲームの特徴と共に紹介して行きます。

息を呑むほど美しいグラフィック

最近はグラフィックが本当に綺麗なゲームが多いですが、このゲームは頭1つ、いや、2つ抜けているほどの美しいグラフィックでした。

また、綺麗にグラフィックを見せるような手法(色彩を濃くする等)はせずに、一つ一つのオブジェクトを丁寧に作っており、また光の加減や物の配置を調整する事で、リアリティを意識した美しいグラフィックを実現しています。

世界観としても、謎の寄生菌が蔓延する事で、多くの人はゾンビのような状態となり、
荒廃したアメリカが舞台となっております。
その荒廃した世界観の表現がものすごくリアリティがあります。
例えば、廃虚マニアが喜びそうな、草木が生えてしまっている建物や、崩壊寸前のビル、
長年使われていない映画館や、水族館等。
廃墟になった状態を想像しながら、作成されたロケーションは草木の生え方や、
汚れ、崩壊具合等、まるで実在するエリアかと想像してしまうぐらい、丁寧に作られています。

このゲームはグラフィックによりリアリティを持たせる事で、ストーリーに対する没入感を
高めているのだと思います。
よって、中途半端に綺麗なグラフィックを表現するのでは無く、徹底的に細部まで作り込む事でリアリティを持たせて、ストーリーに集中してもらおうという意思を強く感じます。

回想シーンの一コマ。化石のオブジェクトや光の加減も丁寧に作られています。

リアリティに特化した戦闘

ゲームを進める上で、対峙するゾンビや人間との戦闘に関しても徹底的にリアリティにこだわっています。

戦闘においては、弾数や回復アイテムの数が常にギリギリの状態での戦闘を強いられます。

また、敵の行動もとても賢く出来ており、音で探知すると一斉に襲いかかってくるゾンビや、
正面から向かってくる敵と、回り込みながら迫ってくるような連携攻撃を仕掛けてくる人間が相手になります。
ちょっとしたミスで、一斉に敵に狙われて、命を落とす事や、貴重な資源を無駄に使ってしまう事が有るため、常に緊張した状態で戦闘をする事になります。

その緊張感が、ゲームのストーリーと非常にマッチしていて、戦い自体がエンターテイメントというよりは、ストレスと疲労感を常にプレーヤーに与えているような状態となります。

正直な話をしますと、戦闘の面白さでは、ステルスアクションの場合、アサシンクリードや、メタルギアソリッドの方が面白いと思います。
また、ゾンビとの戦いにおいてはバイオハザードシリーズの方が面白いと思います。
ただ、上記のゲームは戦いにおいて、エンターテイメントを追求している作品なので、
「The Last of Us Part II」との戦闘とはまた、別の領域だと思います。

「The Last of Us Part II」は徹底的にストーリーとの親和性を持たせているため、
エンターテイメントよりも、辛く厳しい戦いを表現しているのだと思います。
私としては、非常に辛かったですが。。。

ストーリーについて

「The Last of Us Part II」をプレイする上で、プレーヤーも制作する側も最もこだわったのは、ストーリーだと思います。

美しいグラフィックやリアリティのある戦闘は全てストーリーを引き立てる為の材料に過ぎません。
よって、このストーリーをどう受け取るかによって、このゲームを楽しめるか、または楽しめないか、
また、別の感情や体験を得るのか、人によって様々だと思います。
賛否両論を生んでいるこの作品ですが、それほどまでにストーリーに対する依存度が高いのだと考えます。

ストーリーの大きなテーマは復讐劇となります。復讐する側、される側の視点や、
復讐劇に巻き込まれていく人々をリアルに描いています。

ストーリーに関しては、多少エンターテイメントを考慮(先が気になるストーリーにする仕掛け)がされていますが、内容はとても辛く、進めるのが嫌になるような内容や表現が多々含まれています。
この厳しいストーリーを表情にマッチしているのが、荒廃した世界を徹底的に再現しているグラフィックや、リアリティにこだわった戦闘だと思います。

中途半端に綺麗なグラフィックや、エンターテイメントに特化した戦闘だと、
ストーリーとの親和性が薄れてしまい、辛く厳しいストーリーもどこかしら他人事のように感じてしまいます。
ストーリーの流れの中で、新しい場所に移動する事が多々あるのですが、その都度、ゾンビや敵とギリギリの戦いを迫られる事で、ストーリーに対するリアリティが増す事や、出てくるキャラクターに感情移入して行きます。

この重く苦しいテーマを題材にしたストーリーを、グラフィック、敵との戦闘によって相乗効果を出す事で、よりプレーヤーに深い体験をさせているのだと思います。

ストーリー 考察 感想 ネタバレ有り

ストーリーの自分なりの考察、感想を書きます。

考察について

今回のストーリーの中で、よく描き切ったと関心した部分は前回のラストの決着がついた事です。

前回のラストでジョエルは眠っているエリーを助ける為に、医師を殺し、救出します。
目が覚めたエリーに対して、ウィルスの抗体の研究の必要が無い旨の嘘をついて、
エリーはそのジョエルの回答に対してしぶしぶ了承する事で話は終了します。

そして、今回の話の中でジョエルはエリーに真実を話します。
エリーはその事に納得が出来ず、ジョエルに対して嫌悪感を抱く事になります。
それはジョエルの行った行動は、エリーの意思に反する行動だっからです。
しかも、それはエリーの意思が働かない昏睡状態の中で行われた行動だったからです。

上記の構図と対照的なのが、今作の話の流れだと思います。
ジョエルは物語の冒頭にアビー(今作のもうひとりの主役)に殺害されます。
そして、その殺害の復讐の鬼となるのが、今作のエリーになります。

ここからは推測となりますが、前作のエリーの昏睡状態で自分の意思が働かない所で、
自分の意思とは異なる行動をとったジョエルの行動と、
死んでしまって何も言うことが出来ないジョエルの意思、恐らくエリーに対しては、
自分の為に復讐をするような行動をとってほしくはないという意思と反するように行動するエリーが、
非常に対照的に描かれているように思えます。

【前作】
エリー:自分の命を犠牲にして、世界を救って欲しかった
ジョエル:世界を救うよりも、エリーの命を助ける

【今作】
ジョエル:自分の為の復讐の行動よりも、自分(エリー)自身の幸せを願う
エリー:ジョエルを殺した相手に、復讐をする

上記のような構図になり、しかもそれぞれ意思を伝えられない立場にあります。
よって、物語を進める中で、エリーは相手に対して復讐の行動をずっと続ける事になるのですが、
それは前作でジョエルのとった行動を同じ事をしている事になります。

アビーに2度も見逃してもらって、平和な日々を送っていたにも関わらず、
またしても復讐する為に一人でも行動するエリーはやはり、ジョエルと同じように、
相手に対する行動よりも自分の意思を優先したのだと思います。

正直、プレイしていた時の私の感想は、「もう、復讐はやらなくて良いだろう。。」と思っていました。
ただ、落ち着いて考えると、ジョエルが「もし、何度生まれ変わっても、今回と同じ行動をする」と言っていたように、エリーも復讐のチャンスがあれば、何度も立ち向かうのだろうと思いました。

そのような、意思にうごかされるまま、最後にアビーにトドメを刺さなかったのは、
前作からつながっているジョエルの思いが、エリーに伝わり、ジョエルが復讐を望んでいないこと悟ったのだと思います。
そしてそれは、前作のジョエルのとった行動もエリーは許した事になるのだと思います。

感想

ストーリーに対しては、賛否両論あると思いますが、私としては面白かったと思います。

特にアビー編に関してストーリーもキャラクターもとても魅力的で、正直エリー編よりも楽しめた事が高評価につながっているのだと思います。

ラストシーンにおいても、アビーに完全に感情移入していたので、最後は「アビー!!」って心の中で叫びながらプレイを続けていました。

ただ、話全体的には重苦しい雰囲気が流れている事や、前作のキャラクターが幸せな結末を迎えていない事にたいしては、残酷なストーリーだなと素直に思います。
前作に思い入れのある人は特に辛いゲーム体験をしたのでは無いでしょうか。

「The Last of Us Part II」という大作ゲームで、今作のプレッシャーのかかる状況で、
このような挑戦的なゲームを作ることは非常に素晴らしい事ですが、また違った表現方法もあったのでは無いかと、色々と考えされられました。

私個人としては、ストーリーよりは、戦闘にエンターテイメントがもっとあっても良いような気がしました(同じことの繰り返しと、緊張感が長く疲れました)。
ただ、エンターテイメントに寄ってしまうと、逆にこのゲームの良さを無くしてしまうので、
なかなかバランスが難しいですね。

果たして、次回作はあるのでしょうか。発売されたら、必ず買うと思います。

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